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【Editors' Letter】ニュースレター『neutral』の開始に際して、編集長からみなさんへ
私自身が暮らしを見つめ直すきっかけとなったのは、2011年の東日本大震災にあったように思います。それまで私は、電気が原発でつくられていることは知りながらも、それがどこでつくられたものなのか、恥ずかしながら、気にしたことさえありませんでした。
福島の原発でつくられた電気が、大消費地ともいえる東京に運ばれ、スイッチのオン・オフでいとも簡単に、湯水のように使われている。そのスイッチの裏側に思いをはせたこともない自分に、いったい私は何をやってきたのだろうかと大きなショックを受けました。
そして、小さな太陽光パネルとバッテリーを購入し、電気を自分でつくってみるワークショップに参加しました。電気って自分でつくることができるんだということに、何かひとつの答えを見出した気がしました。
当たり前のように享受しているものごとに、依存しないこと。
自分の手を動かしてつくることで、電気とはなんなのか、他の誰でもない自分なりのリテラシーをもつこと。
そこから私は、冷蔵庫を手放し、掃除機を手放し、あらゆる生活家電と向き合って、洗濯機だけ使うという暮らしをすることになりました。そして、自分の使うものや購入するものが、どこで、どのようにつくられて運ばれてきたのか、そして捨てたあとはどのように処分され、最終的にどこへ行くのかを考えるようになりました。
“山に夕闇がせまる
子供達よ
ほら もう夜が背中まできている
火を焚きなさい
お前達の心残りの遊びをやめて
大昔の心にかえり
火を焚きなさい”
これは、山尾三省による詩の一節です。森のなかに暮らした山尾三省さんの言葉からは、人間は火を焚く動物だったことを、そして、かつては自分が扱うことのできる大きさの火を使っていたことを、思い出さずにはいられません。
地球温暖化など、地球からのアラートが日々大きくなる今、大量生産、大量消費、大量廃棄といったグローバリゼーションを前提にした社会システムやライフスタイルを見直さなくてはいけないことは、誰もが気づいていると思います。
自分自身の暮らしを振り返ったとき、みなさんの暮らしでは、どんな変化が起きているでしょうか。
今こそ、サステナブルのリテラシーが必要です。
テクノロジーによるイノベーションも、経済と環境を両立させるためのビジネススキームも、世界じゅうで次々とつくられ、発信されています。しかし、一人ひとりが暮らしのなかでどのように内省し、どのようなプラクティスを続けるのかも含めて、環境に、暮らしに本気で向き合うことが、これからの時代を生きるために必要なのではないでしょうか。
『neutral』は、世界のあらゆるところで始まっている変化を洞察し、月に2回、サステナブルに関する意識や価値観をアップデートするための「視点」をニュースレターでお届けします。新しい視点とリテラシーを見つけにいきましょう。
neutral 編集長 増村江利子