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neutralのFAQ②【neutralの仕組み編】なぜ5ドルのサブスクリプションなの?
ニュースレター『neutral』に関して皆さんからいただきそうな質問を、編集部内でインタビューしあってみました。2回目は『neutral』の仕組みについて。エディター・松原佳代へのインタビューです。聞き手:増村江利子(neutral編集長)
Q.『neutral』は月額制のサービスです。なぜサブスクリプションという形にしたのですか?
A.2020年から「環境」をテーマに事業を開始して、私の中の意識が変わったことがありました。それまでマーケティングやPRをなりわいとして、ブランディングも戦略も「絞ること」だと思っていて。だから、「辞める」は正義だったんです。辞めることを決めることが、事業においても経営においても大事だと思っていました。
環境をテーマに、社会に提案したり発信したりするようになって、それに何の意味があるかはわからないけど「継続すること」「辞めないこと」は、未来の種になり得たり、人を動かしたりすると気づきました。
たとえば、江利子さんが自分の家のゴミを分別し続けているとか、家電を使わない生活をしているとかもそうですよね。明日それが何になる、ってわけではないけど、継続することが未来の種になっている。もう8年ほどになりますか?
そういったことの積み重ねが、コミュニティやまちを変えて、もっと大きなパラダイムシフトを起こす。このサステナブルの領域は、暮らしであっても事業であっても「継続」はとても大事だと思うようになったんです。私は「辞める」ことはたぶん得意。でも、今回は辞めないことを積極的に選択しようと思います。
だから、サービスとして提供するときも、継続を推奨する、継続しやすくなる仕組みをつくりたいと思っています。今やっているもうひとつのBambooRollも定期便だし、『neutral』もあえてメンバーシップで、サブスクリプション。「サステナブル」テーマのニュースレターだから相性がいいと思うんです。
Q.なぜ『neutral』は円ではなくドルなのですか?
A.正直に言うと、サブスクリプションのニュースレターサービスを始めるときにSubstackが現時点ではいちばん仕組みとして成熟していたから、というのはあります。でも、ドルでしか支払いができないのはちょっと悩みました。
正確には読者側としては不安なことは何もなく、日本のクレジットカードで決済すると、その日の為替で円で引き落とされるだけ。ドルを持っている必要もないし、購読されるみなさんの銀行からは円で引き落とされるので、問題ははないんです。
でも、日本に住んでいて購読される方の視点に立つと「いきなりドル?どういうふうになるの?」という不安が生じるから、あまり親切ではないなとは思いました。だから悩みました。私たちにしても、購読する時に悩むことがひとつそこに生じるわけで、あまり嬉しい話ではない。けれど、ドルのままいってしまおう!と決めたのは、これも環境がテーマだったからです。
私はいま米国にいるから、円とドルの相場がとても気になるんです。米国と日本の政治動向も気になります。とりわけ、いまは毎日驚くぐらいの円安だから、すごくチェックしてます。死活問題ですから(苦笑)。でも、日本で生活していると家族や恋人が海外にでもいない限り、毎日、為替相場を見たり、住んでいない国の政治動向を追うことはおそらくしないでしょう。
環境は国ごとに考えればいい話ではなく、地球全体、国境を超えて取り組まなければならない問題ですよね。先進国と発展途上国間でのせめぎあい、開発か環境かみたいなことが常に起こっていて、エネルギーやカーボンの問題は貿易経済とも関係していて、政治や経済と非常に密接です。
だから日本の中だけ見ていればよいという話ではない。日々の生活の中に、この5ドルが入り込んでくることが、月に1回でも、世界情勢の経済や政治、金融に目を向けるきっかけにもなりうるかもしれないと思いました。毎月の引き落としの時の額が異なって「あれ?」と思うぐらいでも。
この5ドルという購読料が、定点観測として、そのタイミングに、今月いったい何が世界と日本の間であったのだろうか?と目を向けてもらうきっかけになればと思います。
Q.有料にした理由は?購読料を読者の皆さんに決めてもらいたいというアイデアも出ましたよね。
A.私たちと読者のみなさんの間に、何かしらの約束事とつながりを継続するものであれば、お金でなくてもよいと思います。でも何かしら与えて、与えられるというのは関係性を構築するにおいて大切な行為です。
たとえば、リアルな不動産やまちの商店だったら、いわゆる物々交換で、野菜とフルーツを交換するとか、マンションの一室を貸す代わりに、階下の惣菜店で働く、といった金銭ではないものでも、自分たちの決めた価値での等価交換は可能ですよね。
でも、オンラインはそれが難しい環境だなと思っていて。悔しいですが、現在の資本主義を形づくる「お金」しかその関係性と継続する方法が思いつかなかったんです。そして、最初にお互いがわからない時の入口としては、みんなの価値が共通の「お金」はわかりやすい。
たとえば、地域において、「関係人口」という考え方があるけど、いちばんライトな最初の入口は、観光としてその地域にお金を落とすことですよね。また、私がこの米国に移住をしたときに、まちに対して何かをしたいと思った時、まだ人のつながりも少ない、ボランティアするほどの語学力がないという時に最初にできることは、まちをよくする団体に寄付をすることでした。
何かしらの金銭以外での等価交換は、いずれは可能かもしれません。
今はミニマムな体制で編集部を始めましたが、今後編集部として、リサーチャーやプロモーションなど、何かお願いしたいことが出てきた時など。そして、関係性をつなぐ方法というだけではなく、わかりやすい評価にもなりそうです。それだけの価値を返し続けます、という覚悟に対して、それだけの価値があるかの評価手段として、読者のみなさんに「お金」という方法を渡そうと思いました。
読者のみなさんに金額を決めていただく「投げ銭」というアイデアもありました。「お金」はわかりやすいといっても、価値は人それぞれだから、いっそのこと読んで決めてもらおう!と。なのですが、これはシステムの実装が複雑になりそうで、いったん保留にしました。いずれはやりたいので諦めてはいません。
Q.「編集会議」というミートアップを開く理由は?
これは江利子さんのインタビューの方でもちょっと触れていますね。
私と江利子さんは、この「おかえり」という会社を創業する前に、ずっと一緒に、メディア運営をやってきました。もう7年ぐらいになりますか。「暮らし」というテーマで、メディアは変わっても、パートナーとして7年間、毎週1回、編集会議を続けていました。
編集会議と言っても、お互いの、社会や暮らしの視点や気づきをシェアして、それに伴う自分の暮らしの変化を紹介し合って、大局として日本と世界のまちやコミュニティがどこに向かっていくのか?そして個々人の暮らしはどう変化していくのか?という話を7年間ずっとしている気がします。
しかも、江利子さんはずっと長野にいて、私は鎌倉、そしてポートランドに移って、結局ずっとオンラインで。
今回は、その、徒然なるままにおこなっていた「編集会議」にみなさんを招待したらどうかな?と。ふたり以外のみなさんの視点をぜひ共有してほしいし、ニュースレターという一方通行の発信の場だけではなく、私たちの日々思うことや視点を共有していく相互の場にならないかなと。そして、みなさんのおもしろい視点をディスカッションして、他の読者の皆さんにも伝えたいことが見つかったら、それをどう伝えるかということまで、しっかりと一緒に考えられたらと思っています。
徒然なるままに、と書きましたが、最初は肩肘はらず、とりあえずやってみる。私と江利子さんが7年間やっている編集会議に、ようこそ、という気持ちで。ネタ帳は開示してもいいかもしれませんね。
(終わり)