#22 ジビエ活用の課題を考える
環境省の調査によれば、この40年で、ニホンジカの生息分布域はおよそ2.7倍に広がって、希少な高山植物が食べられるなど被害が報告されています。とはいえ、地域資源としてのシカ肉利用は、広がっていないようです。なぜ広がっていないのか、どのような可能性があるのかを調べました。
ニホンジカをめぐる状況
シカは1900年から1950年くらいまで、個体数がとても少なく、無期限の捕獲禁止令が出るほどだったのですが、戦後の拡大造林で草地が造成されたことや、天敵となるニホンオオカミの絶滅もあって、2000年に向かって一気に個体数が増加。シカは低山や人里近くに生息することから、主に農作業に被害を与えてきました。私たちの食を確保するために、シカが入れないように柵をつくったりしてきましたが、近年は、森の奥や標高の高い山岳地帯にも進出して、希少な高山植物をエサとしたり、森林の幼木や樹木の皮を食べて、木を枯らしてしまっています。
そのため、草原や森を生活圏としていた昆虫や森が生きられない状況になりつつあるのだとか。増えすぎたシカの個体数を調整するために、私たちと同じ命を奪ってもいいのか、